サラリーマンにとって、所得税は普段あまり意識しないものです。
毎年、源泉徴収されるから、所得税を気にしたことがなかったけれど、
どうやって計算されているんだろう?
という方は、多いのではないでしょうか。
先日も、SNSで「所得区分のレンジを超えたら、課税所得の全額に税率が適用されるんじゃないの?」という投稿を見かけました。実際のところ、計算方法については誤解されがちです。
最近は副業を始める方が、増えてきています。
副業が軌道に乗ったは良いものの、所得総額が増えた結果所得税の額にビックリしてしまう。
そうならないためにも、所得税の計算方法は確認しておきましょう。
・所得=収入ー必要経費
・所得税は、課税所得×所得税率
・所得の金額に応じて、区分ごとに税率が変わる(超過累進税率方式)
・課税所得額によって税率は変わるが、速算表で一発計算
所得とは
「所得って、年収のことだよね?」
という方が、いらっしゃるかもしれないので、最初に説明します。
所得とは、個人から1年間(1/1〜12/31)に得た収入から、収入を得るためにかかった必要経費を差し引いた金額のことです。以下の計算式で説明されます。
所得=収入ー必要経費
よく、「所得税は収入にかかる」という勘違いがありますが、そうではなく、文字どおり「所得にかかる税」です。
所得の種類
所得の種類としては、以下の10種類があります。
説明は割愛しますが、それぞれの所得について、計算方法が決められています。所得ごとの控除や、共通の控除を踏まえたものが、課税所得となります。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
会社からの給与は、「5.給与所得」。
副業の収入は、一定条件を満たせば「4.事業所得」、満たさなければ「10.雑所得」になります。
所得税の計算
所得税は、以下の計算式で求められます。
所得税=課税所得×所得税率
基本的には、課税所得に税率をかけるだけ。シンプルですね。
余談ですが、源泉徴収票に載っている実際の納付額は、所得税に加えて復興特別所得税を支払っています。復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源確保を目的として作られたもので、対象年は2013年〜2037年。所得税に2.1%をかけて求めます。
所得税率とは
それでは、所得税率はいくらなのか?
以下の速算表が使われています。
日本では、超過累進税率方式をとっていて、所得の金額に応じて、区分ごとに税率が変わります。
冒頭にも記載しましたが、「所得の金額に応じて、区分ごとに税率が変わる」ことについて、「所得区分のレンジを超えたら、課税所得の全額に税率が適用される」という意見をしばしば見かけます。
税率が上がるのは文字通り「超過」分のみであり、全額ではありません。
実際に以下の2パターンで計算してみましょう。
- 所得税率で地道に計算
- 所得税の速算表で計算
共通して、課税所得が4,000,000円の場合とします。
所得税率で地道に計算
地道に計算する場合は、所得税率のみを使用し、その右にある控除額は使用しません。課税所得を3つの所得帯に分け、それぞれ計算します。
- 1,950,000円までの所得税
1,950,000円×5%=97,500円 - 1,950,000円〜3,300,000万円の所得税
(3,300,000円ー1,950,000円)×10%=135,000円 - 3,300,000円〜4,000,000円の所得税
(4,000,000円ー3,300,000円)×20%=140,000円 - 合計
97,500円+135,000円+140,000円=372,500円
所得税の速算表で計算
速算表で計算する場合は、課税所得全額に税率をかけた後、その右にある控除額を引けば良いようになっています。
4,000,000円×20%ー427,500円=372,500円
一致しました。
上記のことから、所得税は超過累進税率方式であることが分かります。
控除額の中身確認
最後に余談ですが、なぜ「控除額を引けばいいのか」について、説明します。
上記と同様に、課税所得額は4,000,000円として、仮に速算表の税率をそのままかけた場合に、どのくらいの差異が出るのか見てみます。
地道に計算(A) | 速算表(B) | 差異(A-B) | |
1,950,000円まで | 97,500円 | 390,000円 | 292,500円 |
1,950,000円〜3,300,000円 | 135,000円 | 270,000円 | 135,000円 |
3,300,000円〜4,000,000円 | 140,000円 | 140,000円 | 0円 |
合計 | 372,500円 | 800,000円 | 472,500円 |
差異は、ちょうど控除額の金額(472,500円)となりました。
結果として、自身の所得額をもとに速算表のレンジを見れば、一発で計算できることが分かります。便利ですね。
終わりに
今回は、所得税率のお話でした。